今回はスキレットやダッチオーブンのメンテナンス方法です。
よく「洗剤で洗ってはいけない!」って言われますが実はそんなことないんです。
洗剤で洗うのが好ましくないのは、揚げ物用の鍋です。
焼きに使うスキレットや鍋は洗剤で洗って問題ありません。
ちなみにプロの料理人(わりと有名な方)の方に直接聞いたところ鉄製品でも毎日洗剤で洗っているそうです。
中には洗剤を使わない方もいるそうですが少数派のようです。
この記事では、実際に洗剤(中性洗剤)を使って擦ったスキレットを使い実験しつつなぜ洗剤で洗っても大丈夫なのか解説します。
目次
スキレットは洗剤で洗おう
多くの記事に洗剤で洗うと「錆びる」とか「材料がくっつきやすくなる」とか「シーズニングやり直し」とか書かれていますが、控えめに言えば迷信、通常の言い方なら不正確、大袈裟に言うと嘘です笑
むしろ、ちゃんと洗わないと直近の料理の臭いや、酸化した油の嫌な匂いが残って美味しい料理ができません。
もしあなたのスキレット料理が独特な臭いがするなら、それは洗剤で洗ってないからです笑
スキレットを洗っても大丈夫なのは、「料理人がそうしているから」というような単純な理由ではありません。
シーズニングでスキレット表面に作られる酸化被膜と樹脂層という2層の超強力な保護膜は洗剤で洗った程度では落ちないからです。
この保護膜については詳しく後述いたします。
この記事では、先に洗剤で洗った後のメンテナンス方法を書いておきますので、それだけわかればOKという方はすぐ下を読んでいただき、理由も知りたいという方は先を読み勧めてください。
ちなみに洗剤で洗ってもメンテの方法は世の中に出回っている方法と一緒です。
スキレットのメンテナンス方法
スキレットを洗剤で洗った後のメンテナンス方法
- スキレットを洗剤で洗う
- よく拭いて乾かす
- 気になる人はサラダ油塗っておく ※1
- しばらく使わない場合は新聞紙などにくるみ保管する
以上です。
※1 本当は使用後に油塗る必要ないです。油なんか塗ったら酸化してつぎ使う時に嫌なにおいします。
焦がしてしまった時
焦がしてしまったときは一度ガンガン火にかけて焦げを焼き切ります。
焦げは中途半端に炭になっている状態がほとんどなので、焼き切ることで完全に炭化して落ちやすくなります。
この場合は油は使わず空焼きします。
所謂「鍋焼き」です。
焦げを完全に炭化させたら金属ベラや金属タワシでこすれば簡単に落ちます。
焦げを落とすと油が作っていた樹脂層が剥がれるのでもう一度軽くシーズニングしましょう。
料理にに嫌な匂いがつく場合
スキレット表面が劣化した油まみれになってしまっていて料理が美味しくできないことがあります。
洗剤で洗わずに使用後に保護としてオリーブオイルを塗りたくっていたりするとこうなります。
そうなってしまった場合、焦がしてしまったときと同じように「鍋焼き」をして劣化した樹脂層を炭化させて剥がしましょう。
焼き切ったら洗剤を使って金属タワシでこするか、クレンザーでガシガシ洗って劣化した油の層を剥がします。
その後は軽くサラダ油でシーズニングすれば嫌な匂いが取れます。
スキレット使用前には油返しをする
スキレットを使う前に「油返し」を行います。
油返しとは、熱したスキレットに油を少し多めに入れ全体になじませる行為です。
余分な油はオイルポットに戻すか、キャンプやBBQ中ならキッチンペーパーに吸わせましょう。
スキレットを洗剤でガッツリ洗って目玉焼き
さて、さっそく実験してみます。
スキレットを洗剤で洗って、目玉焼きを作ってみます。
上手に焼けました。
全然くっついたりしないです。
くっつかないのは洗剤で洗ってもスキレット表面の「樹脂層」が剥がれていない証拠です。
なぜ洗剤で洗っても大丈夫なのか
答えは簡単。
被膜は洗剤なんかじゃ簡単に落ちないからです。
洗剤で洗うと「被膜が取れる」と書いてある記事が溢れかえっていますが、そう簡単に取れません。
被膜はコーティング剤みたいに塗りつけてあるわけではなくて、鉄の表面の化学組成が変化しているので洗剤ごときでは簡単に取れないんです。
被膜は四酸化三鉄(Fe3O4)といって、鉄の温度をを600℃くらいに上げると、空気と触れている部分の鉄が酸素と結合し変化を起こして作られます。
表面の化学組成が変化しているので、落ちるとか落ちないとかじゃないです。
落とす方法は表面を削るってことくらいです。
被膜は二種類ある
スキレットの表面を覆う被膜は鉄が変化してできる酸化被膜と、もう一つ、油が変化してできる樹脂層があります。
1つずつ解説していきます。
酸化膜(黒錆)
これは先程書いた鉄の化学組成が変化して作られる被膜です。
最初にシーズニングして作ります。
上述したとおり、表面を削れば別ですが洗剤で洗うと簡単に剥がれるとかそういうものじゃないです。
こんな風にスキレット表面の鉄が変化して膜のような構造をしています。
樹脂層
今まで皮膜と言っていましたが正確にはこっちは油が変化してできるコート剤のようなもので、キッチン周りをベタベタにするあの嫌な油汚れと同じものです。笑
ガスレンジ回りや、換気扇回りにこびりつくあのベタベタ汚れです。
簡単に落ちないってわかるでしょう?笑
樹脂層は、さらなる防錆コーティングの役割と料理の材料がスキレットにくっつくのを防止する働きがあります。
これは、前の油返しで回復するしそもそも簡単に洗剤で押したりしません。
こんな風にスキレット表面をコーティングしています。
鉄より鋳鉄のほうがサビに強い
ちなみに同じく管理が大変な鉄のフライパンですが、スキレットは鉄のフライパンより腐食耐性があります。
鉄のフライパンはいわゆる「黒川鉄板」というものですが、しっかりシーズニングされた鋳鉄製のスキレットはこれより腐食耐性は強いです。
表面は同じ四酸化三鉄ですが、ただ、鋳鉄は鋼に比べ全く錆びない黒鉛が多いため、錆びた鉄の物理的な脱落を防ぐアンカーの役割を果たし、腐食が内部に広がりません。
また、ケイ素も多く含んでいるので錆層が安定化して「錆びてボロボロになる」ということになりづらいです。
なのでちょっと錆びても楽勝で落とせます。
使ってるうちに錆びなくなるのであまり気にしないでください。
つまり本当に一生モノです。
たまに逆のことが書いてありますが、科学的にはこちらが正しいです。
錆びさせてしまう主な原因は最初のシーズニングの不備だと思われますので、続いてシーズニングの方法について解説します。
シーズニングはとことんやる
しっかりした2つの膜を作るには、はじめが肝心です。
シーズニングでできる2つのコーティングは超強力なのでちゃんやっていれば洗剤で洗っても問題有りません。
なのでしっかりシーズニングしましょう。
シーズニングの仕方
- 買ってきたスキレットを洗剤でよく洗い工業油を落とす
- スキレット全体が青みがかった黒色になるまで熱する
- サラダ油を薄く塗布して、煙が出なくなるまで熱する
- 3を数回繰りし、黒くなったらクズ野菜を炒めてお終い
2番が非常に大切です。
酸化被膜を作るには600℃以上必要なので、しっかり空焼きしないと被膜ができません。
3番は、煙がモクモク出るほどやる必要があります。
モクモク煙が出たら引火しないように火を消すか、火から遠ざけましょう。
しっかり油が馴染んでいれば、洗剤で洗った直後はもなんかベタついてるような手触りになります。
完全に乾くとベタつきは少なくなります。
どうしてオリーブオイルでのシーズニングが当たり前のようになっているのかわかりませんが、オリーブオイルはシーズニングに適していません。
悲しいくらいに適していません。
キャノーラ油にはオリーブオイルの2倍くらいリノール酸が含まれています。
オリーブオイルは10%がリノール酸で殆どがオレイン酸です。
もっと適した油もあります。
リノール酸の含有量は油の種類によって異なります。
普通のサラダ油は大豆油とかなたね油を混ぜたものなのでリノール酸が多いです。
ご存知のようにサラダ油はオリーブオイルのような独特の香りもないのです。
ただ酸化するとちょっと変な匂いがしますけどね。
出典: 日清オイリオ
人気のある植物油だとこんな感じ。
出典: 日清オイリオ
シーズニング不要のスキレットもある
ロッジのスキレットはシーズニング不要です。
最初からガッツリシーズニングしてあるので、あとは使い込んで育てていきましょう。
普段使いで鉄を育てる
スキレットは普段から使っていればそんな簡単に錆びないし、どんどん育っていきます。
スキレットの上手な使い方は次のとおりです。
- 保護用に塗った油を潜在で洗って落とす ※2
- スキレットに油を塗って煙が出るくらいまで熱する
- あまった油は捨てて、あらたに必要な分だけ油をいれ調理開始
※2 保護用の油塗ってる人だけです。そのまま使うと酸化した油のせいで美味しくないし体に悪いです。
長期間放置したら錆びることもある
ずーっと放置してればそりゃ錆びますよ。
ひどい錆びても、サビを落としてシーズニングすればまた使えるので安心してください。
まとめ
スキレットを洗剤で洗わない風習って不思議ですよね。
ちゃんと洗わないと酸化した油が次の料理に移って美味しくないし気持ち悪いです。
洗っても全然問題ないので、ちゃんと洗って美味しスキレット料理を楽しんでくださいね。